夢見る頃を過ぎても その3 「ちょっとしたこと」をちゃんとする
「夢見る頃を過ぎても」という連載をはじめて、今回で3回目。
今回は「駅」にまつわる「ちょっとしたこと」について。
文章の区切りや、キャプションが追加されて掲載されるのは
今日夕方でしょうが、その前に生原稿を全文公開!
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夢見る頃を過ぎても 第3回
「ちょっとしたこと」をちゃんとする
例えば駅の階段や通路。「のぼり」「くだり」「左側通行」、あるいはもっと丁寧に
「この場所では右側通行でお願いします」等々、大抵の場合、どこを歩くべきかが
掲示されている。駅によって、あるいは同じ駅でも乗り入れている路線によって
これが逆になったりするから、自分では気づかないうちに「逆走」している場合も
あるかもしれない。でも、普通に前を見て歩いていれば、どこかの時点で必ず
これらの掲示は目に入るはず。「前を見て歩いていれば」ね。
だから、自分が逆走していることに気づいたら、その時に正せばいい。
前を見て歩いていない理由。多いのはスマホの「ながら歩き」だ。
これは本当に危険。「でも私、ぶつかったことないもん!」という人も
いるだろうけれど、それは周囲が避けてくれているだけであって、あなたに
「前を見ていなくても他人とぶつからない」という特別な能力があるわけではない。
周囲の気遣いによって、あなたの安全が守られているのだ。
「スマホじゃないもん!」とばかりに、本を読みながら歩いている人もたまに見かける。
こういう人は、「スマホがよしとされていない」んじゃなく、「ながら歩きが
がダメなのよ」という根本的なことをわかっていない。
スマホであれ本であれ、本来それに集中すべきではない場所で、それに集中してしまう
ということは、人にぶつかる危険性があるだけではない。スマホや本など、目の前の
ほんの狭い部分にしか注意を向けていないので、周囲の動き、人の流れに乗れないのだ。
東京ではエスカレーターの右側を、急ぐ人のためにあけるというローカルルールが
できてしまっている(最近、その是非が問われていて、問題になっていることは
ここでは言及しないけれど)が、その右側をスマホや読書しながら、周囲の流れ
全く無視のスピードでゆったりのったり歩いている人も多い。
駅のホームで電車を待つとき。ドアの位置がどこかは、ほとんどの場合わかるように
なっている。「2列でお待ちください」「3列にお並びください」と書いてあることも
多い。なのになぜ、ドア位置と全然関係のないところに立って電車を待ち、電車が
入ってくると同時にスーっとドア位置に寄ってくるのか。当然、最初からドア位置で
待っていた人にすれば、その人は「割り込み」をしたことになる。血気盛んな若者や、
ちょっとお酒の入っちゃった人同士だったりすると、これが喧嘩の発端になることも
ある。ここで喧嘩が起きると、発車が遅れる原因になったり、無関係の人が巻き添え
くらって怪我したり……という思わぬ事態に発展してしまうこともある。
電車を利用するときの色々は、本当に些細な「ちょっとしたこと」だ。
でも、会社勤めをしているなら毎日のことでもある。くだりの階段を上ろうが、
駅の通路を逆走しようが、自分のながら歩きのせいで誰かに気を遣わせていようが、
電車をどの位置で待とうが、あなたの毎日にはなんの影響も与えていないかもしれない。
でも、この「ちょっとしたこと」をちゃんとすることで、誰かの毎日を今よりもっと
気持ちのよい日にすることもできるのではないか。自分の「今やりたい」の気持ちだけを
優先するのではなく、周囲に対して今よりちょっと気遣いをする。周囲に対する気遣いには、
何も特別な犠牲などいらないわけで。だって、ちょっとだけ想像力を働かせて、周囲が
どう感じるか、考えてみればいいだけだもの。
それは、自分の毎日を気持ちよい日にすることにもきっと繋がるのだから―。