変化に対応する
「最近やかんを火にかけたこと、忘れちゃうのよね」
母がつぶやいた。
「だから、うるさくてキライだったアレ、使うことにしたの」
「アレ」とはお湯が沸くとピーピー音を出すやかんのことだ。
魔法瓶がキライな母は、お茶を飲むたびお湯を沸かす。
年とともに、色々忘れっぽくなっている自分を案じ、
万が一のことを考えキライなものでもリスク回避のために
使うことにしたそうだ。
「年を取る」ということ以外にも、人は予期しない「変化」に
対応しなければならない場面がある。
急に部下を持つことになった。
担当が変わった。
職場が変わった。
上司が変わった。
同僚がやめた。
負担が重くなった。
給料が落ちた。
自分の意思とは関係なく起きた変化にどう対応するか、
母にとっての「ピーピーケトル」は自分にとっては何に
当たるのか、考えてみようと思った秋の日。